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M&A(企業買収)その5〜企業価値算定〜

こんにちは、naganoです。
前回までで4回に渡りM&Aの大枠の流れ、買収戦略立案、ターゲット企業の選定、FA選定について説明してきました。

第1回:M&A(企業買収)その1〜M&Aの流れ〜
第2回:M&A(企業買収)その2〜買収戦略の立案〜
第3回:M&A(企業買収)その3〜ターゲット企業の選定〜
第4回:M&A(企業買収)その4〜フィナンシャル・アドバイザー(FA)の選定〜

今回は企業価値算定の概要を説明したいと思います。

企業価値とは

企業価値とは企業が将来にわたって生み出すと期待されるキャッシュフローの現在価値合計額を意味して

企業価値=株主価値+債権者価値

という式で表現することができます。

株主価値とは企業が生み出すキャッシュフローのうち、株主に帰属するキャッシュフローの現在価値の合計額を指し、上場企業の場合は株式時価総額がその目安となります。債権者価値とは企業が生み出すキャッシュフローのうち、債権者に属するキャッシュフローの現在価値合計額を指し、純有利子負債の額がその目安となります。なので企業価値と株主価値は同義ではなく、M&Aにおける株式の値段は株主価値を指しますが、買収金額という場合は一般に買収対象企業の純有利子負債(債権者価値)も含めた企業価値を指すことが多くなります。

また、一般にFAに対する成果報酬は株主価値ではなく企業価値に基づいて決定されます。そのため仮に株価がゼロであっても、100億円の有利子負債を引き継ぐ場合は、買収金額は100億円となり、この100億円に対して数%の成功報酬が課せられることになります。

企業価値評価の3つのアプローチ

企業価値の評価方法には、マーケット・アプローチ、インカム・アプローチ、コスト・アプローチの3つのアプローチがあります。実務では複数のアプローチを使用することが一般的です。

マーケット・アプローチ

マーケット・アプローチは株式市場での市場価格をベースに評価する方法です。評価対象会社が上場企業なら当該対象会社の市場株価をベースに評価します。評価対象会社が非上場企業の場合は類似上場企業の市場株価をベースに評価することになります。マーケット・アプローチは市場株価がベースとなっているため、最も客観的かつ公正な評価方法といえます。そのため、上場企業あるいは類似の上場企業が存在する非上場企業の評価においては最も重視される評価アプローチです。ただし、市場株価は一時的に異常な動きを示すことがあるため、一定期間の平均値をとるなど、一時的な要因で評価が歪まないようにする工夫が必要です。

マーケット・アプローチの主な評価方法は以下の通りです。

  • 市場株価平均法:上場企業の一定期間の平均株価より算定する方法
  • 類似会社比較法:類似上場企業の株価倍率をもとに算定する方法
  • 類似取引比較法:過去の類似したM&Aでの取引価格をもとに算定する方法

インカム・アプローチ

インカム・アプローチは評価対象会社の収益力をベースに評価する方法です。その代表的な評価方法はDCF法で評価対象会社の将来期待される一連のキャッシュフローをそれが実現するのに見込まれるリスク等を反映した割引率で現在価値に割り引いて株価を算定する方法です。DCF法は評価対象会社の詳細キャッシュフローの計画に基づくため、複数のシナリオの設定や変動要素の影響を加味したシミュレーションをすることも可能で、柔軟な評価ができる点の特徴があります。反面、将来のキャッシュフローの見通しには主観的な要素が多く入り込むため、恣意的に評価することも可能で、交渉上説得力を持たせるためにはいかに合理的なロジックに基づいて評価されているかがポイントになります。

インカム・アプローチの主な評価方法は以下の通りです。

  • DCF法:将来獲得するキャッシュフローを現在価値に割り引いて算定する方法
  • モンテカルロDCF法:モンテカルロシミュレーションを利用し、複数の変動要素の不確実性の影響を織り込んだDCF法
  • APV法:割引率や資本構成の変化を織り込んだキャッシュフローの現在価値を利用して算定する方法
  • 配当割引モデル:将来の予想配当を資本還元して算定する方法

コスト・アプローチ

コスト・アプローチは評価対象会社の純資産をベースに評価する方法です。具体的には貸借対照法上の資産、負債の時価を評価することによって企業価値を評価します。貸借対照法はいわば過去から現在までの収益の蓄積が反映されたものですが、将来の収益に関しては一切織り込まれていないため、コスト・アプローチは評価対象会社がゴーイング・コンサーンとして永続することを前提とした場合は単独で利用することは合理的とは言えない点に留意すべきです。

コスト・アプローチの主な評価方法は以下の通りです。

  • 時価純資産方法:会社の有する資産の時価より負債の時価を控除して出資持分の価値を評価する方法
  • 簿価純資産方法:貸借対照法上の純資産に調整を加えず評価する方法

評価アプローチ間の関係

各アプローチでの評価結果は必ずしも同一にはなりません。各アプローチの評価結果は基本的には

コスト・アプローチ<マーケット・アプローチ<インカム・アプローチ

となります。

コスト・アプローチは前述した通り、過去から現在までの価値を表したものにすぎず将来価値としての営業権が織り込まれていないため、評価額としては最も低くなります。こういった評価アプローチによる算定結果のバラつきについて留意し、価値算定作業を終えたあとは、必ず各アプローチによる評価結果が上記の不等式の関係になっているかをチェックすることが重要になります。

まとめ

いかがでしたでしょうか、今回は企業価値算定の概要について説明してきました。ただし、非上場の中小企業の場合は年買法(年倍法)といったもう少しシンプルな算定方法もあります。今後機会があれば説明していきたいと思います。