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M&A(企業買収)その7〜基本合意〜

こんにちは、naganoです。
前回まで6回に渡りM&Aの大枠の流れ、買収戦略立案、ターゲット企業の選定、FA選定、企業価値算定、買収スキームの着眼点について説明してきました。

第1回:M&A(企業買収)その1〜M&Aの流れ〜
第2回:M&A(企業買収)その2〜買収戦略の立案〜
第3回:M&A(企業買収)その3〜ターゲット企業の選定〜
第4回:M&A(企業買収)その4〜フィナンシャル・アドバイザー(FA)の選定〜
第5回:M&A(企業買収)その5〜企業価値算定〜
第6回:M&A(企業買収)その6〜買収スキームの着眼点〜

今回は基本合意の概要を説明したいと思います。重要な論点について交渉がまとまった段階で、基本合意を締結することが一般的です。基本合意は、通常M&A実行に対する法的拘束力を有しない合意ですが、M&A交渉の流れを変える重要な節目となることが多くなります。

基本合意の必要性

「基本合意」とは、最終契約に至る前に基本的な事項について両者が合意できたことを書面で確認するものでLOI(Letter Of Intent)やMOU(Memorandum Of Understanding)とも呼ばれています。

基本合意には取引条件面での法的拘束力を持たせないことが一般的ですが、内容によっては法的拘束力を持つと解される場合もあるほか、取引条件面以外の条項については法的拘束力を有することが多く、一概に法的拘束力がないというイメージで軽く考えてはいけません。むしろ、基本合意はM&Aにおける重要な節目であり、基本合意を締結することができれば交渉成立の確度は相当程度高まったと考えられます。

基本合意を締結するメリット

取引条件面での法的拘束力がないにもかかわらず、多くのM&Aにおいて基本合意が締結される理由は、基本合意には以下のようなメリットがあるためです。

重要な論点の合意形成と心理的拘束

基本合意書には買収価格やスキームといった交渉上の重要な論点における合意が盛り込まれることが多く、基本合意締結を通じて、交渉上の重要な論点において合意形成が実現できるほか、売り手・買い手双方の取引成立に向けた心理的拘束力が期待できます。

買収価格の上限設定

基本合意書には、具体的な買収価格もしくは価格レンジが盛り込まれることが多く、通常は基本合意後にDDが行われるため、DDの発見事項によっては価格が引き下げられることもあるという条件付きでの合意になります。いずれにせよ、買い手としては買収価格の上限を設定することができるというメリットがあります。

スケジュールの明確化

基本合意書には、最終締結日の目処や基本合意の有効期限が盛り込まれることが多く、それによりクロージングまでのスケジュールを明確化することができます。

排他的交渉権(独占交渉権)の獲得

通常、買い手は基本合意により排他的交渉権(独占交渉権)が付与されます。これにより、売り手が他の第三者と交渉することを防ぐことができます。

公表による買い手の交渉力強化

上場企業の場合、基本合意後に適時開示により案件が公表されるケースが多く、この場合、公表されると買い手のほうが交渉上の立場が強くなることが一般的です。なぜなら、買収対象企業は公表後に交渉が成立しなかった場合、DDにより大きな問題が発覚したためとの憶測が飛び交い、その後の経営に重大な悪影響を被る可能性が高いためです。そのため、売り手は交渉成立を重視せざるを得なくなり、交渉において譲歩を引き出しやすくなります。

基本合意に盛り込まれる事項と主な論点

基本合意は、できるだけ具体的な取引条件面での合意を盛り込んだ形で書面を交わすことが望ましいですが、上場企業の場合は開示規制にかからないよう、あえて具体的な条件の合意を盛り込まない形で書面を交わすこともあります。具体的な合意事項としては、以下のような項目が盛り込まれることが一般的です。

買収スキーム及び買収価格

買収スキーム及び買収価格は、M&Aにおいても最も基本的な取引条件であるため、基本合意の段階でこれらについて合意を明確にしておくことはその後の交渉をスムーズに運ぶ上で極めて有益です。

役員・従業員の引継ぎと雇用条件

役員や従業員の引継ぎについても重要な取引条件となることがあり、その場合は基本合意段階で合意を形成しておくことが望ましいです。特に、買収対象企業が非上場のオーナー企業で、後継者不在が売却理由である場合、オーナー経営者が早期に引退することが売り手側の重要な関心事であることが多く、その場合、オーナー引退時期や役員退職慰労金は重要な取引条件となります。

クロージングの前提条件

クロージングの前提条件として、許認可の取得や重要な契約の更改、不採算部門の撤退等、買収対象企業の抱える重要な課題の解決等を盛り込むことがあります。この条件が満たされない場合はM&Aを成約することはできないような重大な事項について、基本合意段階で合意を形成しておくことが望ましいでしょう。

最終締結日、クロージングの目処

基本合意では、最終締結日もしくはクロージング日の目処を明記することが重要です。最終締結日の目処はDDに必要な日程などを考慮した上で決定されるが、概ね基本合意から2~4ヶ月くらいが目安となります。クロージングはスキームにもよりますが、株式譲渡であれば最終締結日から1ヶ月程度のうちに行うことが一般的です。

DDの実施

買い手が基本合意後にDDを実施することおよびDDに対して買収対象企業が協力することを基本合意書上で明確化します。

独占交渉権と違約金

基本合意の有効期間中、売り手が買い手以外の第三者とM&Aの交渉を行うことを禁止します。買い手についても第三者との交渉が制限されるケースがあります。買収対象企業への競合買収者が多く存在する場合、買い手はできるだけ早く基本合意を締結して独占交渉権を確保することが重要になります。

秘密保持義務

交渉開始時点で当事者間で秘密保持契約が締結されていることが通常ですが、契約当事者を追加する必要がある場合や秘密保持義務の対象範囲をより広く設定する必要があることも多く、基本合意時点で改めて秘密保持義務条項を盛り込むことが一般的です。

善管注意義務

善管注意義務とは「善良なる管理者の注意義務」の略で、これは売り手が買収対象企業の企業価値を毀損するような行為を行ってはならない義務を負うとうものです。これにより、売り手は基本合意後に買収対象企業の事業の運営及び資産の管理に関し、以下のような項目が制限されます。

  • 重要な資産の譲渡、処分、賃貸借
  • 増減資
  • 多額の新規借入・新規投融資
  • 従業員の賃金・給与水準の大幅な変更
  • 重要な顧客との取引条件の変更

基本合意の有効期限

基本合意の有効期限は特定の日もしくは最終契約締結日のいずれか早い日とすることが一般的です。期間としては3ヶ月〜6ヶ月程度が目安です。

公表

秘密保持義務条項の内容にかかわらず、相手方当事者の事前の同意なくして、案件の合意内容について公表してはいけないとする条項が盛り込まれることが一般的です。

法的拘束力の有無の明確化

基本合意者では、取引条件に関する合意については法的拘束力を持たせない一方、DDの実施、独占交渉権、秘密保持義務、公表、善管注意義務。有効期限等については法的拘束力を持たせることが一般的です。法的拘束力のある条項を明治する条項を盛り込むことで、基本合意書の法的拘束力がより明確になります。

まとめ

今回は基本合意を締結する意味合い、盛り込むべき事項について説明してきました。法的拘束力がないというイメージで軽く考えがちですが、基本合意はM&Aにおける重要な節目でもあるので、よく内容を吟味して締結するようにしましょう。

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