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M&A(企業買収)その10〜財務DDの着眼点〜

こんにちは、naganoです。
前回まで9回に渡りM&Aの大枠の流れ、買収戦略立案、ターゲット企業の選定、FA選定、企業価値算定、買収スキームの着眼点、基本合意、DDの概要、DDの進め方について説明してきました。

第1回:M&A(企業買収)その1〜M&Aの流れ〜
第2回:M&A(企業買収)その2〜買収戦略の立案〜
第3回:M&A(企業買収)その3〜ターゲット企業の選定〜
第4回:M&A(企業買収)その4〜フィナンシャル・アドバイザー(FA)の選定〜
第5回:M&A(企業買収)その5〜企業価値算定〜
第6回:M&A(企業買収)その6〜買収スキームの着眼点〜
第7回:M&A(企業買収)その7〜基本合意〜
第8回:M&A(企業買収)その8〜デューデリジェンス(DD)〜
第9回:M&A(企業買収)その9〜DDの進め方〜

今回はDDの中でも最も重要な財務DDの着眼点について説明したいと思います。

損益計算書の分析

売上高

事業別、商品別、顧客別、月別等の売上推移を分析し、収益構造の特徴を明らかにします。売上高の変動要因を数量要因と単価要因に分けて分析するとよいでしょう。特徴的な変化がある場合はその背景を調査します。また、リベートや売上計上時期の操作による粉飾や関係会社との循環取引の有無にも注意しましょう。

売上原価・製造原価

事業別、商品別の売上原価の構成要素を確認します。原価率の推移をみて変動があればその要因を分析します。仕入先の集中度合いや仕入れ価格の推移についても分析します。製造業の場合は材料費、労務費、間接費等の製造原価の構成要素も分析し、収益性に影響を与えている要素を検討します。原料の市況、販売価格、工場の操業度などとの比較も有効です。

販売管理費

費目ごとの売上高販管費比率の変動を分析し、費用構造を把握します。特徴的な変化や過大な費用項目があればその要因を調査するとともに、正常な水準を検討します。各費目の比率について同業他社との比較分析も有効です。

人件費

どの企業においても人件費は大きなコストであるため、人件費の水準について分析することが重要です。従業員(パート・アルバイト・派遣社員含む)の絶対数や人数の増減、平均年齢、年齢構成、勤続年数、直間比率等、人員構成の特徴について把握した上で一人当たり人件費の水準を分析します。一人当たり売上高や労働分配率による一人当たりの生産性との比較も重要です。

営業外損益・特別損益

営業に関する損益が営業外損益もしくは特別損益に含まれていないかを検討します。特に雑収入や雑損益には営業的な性質のものが計上されているケースが多いです。営業に関する損益項目は企業価値評価においてEBITあるいはEBITDAに織り込むため、その切り分けは重要になります。特別損益についてはその損益が計上された背景を確認します。

貸借対照表項目の分析

売上債権(受取手形・売掛金)

売上債権の増減と回転期間の推移を分析し、特徴的な変化がある場合はその背景を調査します。主要な取引先については個別に売上債権の増減と回転期間の推移を分析します。特に債権の回収期間が長くなっている場合はその背景について分析することが重要です。過去の売上債権の貸倒実績や個別の取引先に対する回収可能性を分析し、不良債権の有無や貸倒引当金の妥当性、与信管理の運用状況を確認することも重要です。必要に応じて取引先の信用調査も行います。

棚卸資産(製品・半製品・原材料含む)

棚卸資産の評価方法を確認し、評価方法の妥当性について検討します。商品群ごとの回転期間を分析し、回転期間が長くなっている場合はその要因を調査するとともに不良在庫や滞留在庫がないか確認します。キャッシュフローの観点から適正在庫の水準を把握しておくことも重要です。棚卸資産の時価評価については、在庫年齢により減価率を設定したり、目下の市場価格を基準に低価法により評価することが多いです。また、棚卸資産の実在性や保管状況を確認するため、倉庫の実地調査は必要不可欠です。

仕入債務(支払手形・買掛金)

回転期間が変動している場合はその要因を把握します。支払遅延が生じている場合は注意が必要です。また未計上の仕入債務がないかも確認します。

正味運転資本

正味運転資本は、売上債権+棚卸資産−仕入債務にて算出します。正味運転資本の推移と変動要因を把握するとともに、運転資金の調達源を確認します。通常は、運転資金は現預金および短期借入金により賄われるはずであるが、長期借入金が運転資金に充当されている場合は要注意です。

有形固定資産

土地・建物をはじめてとする資産の含み損を評価します。減価償却の適正な処理がされているかを確認することも重要です。建物や機械設備等を適正な帳簿価格をもって時価とみなす場合、圧縮記帳が行われていないか確認することが重要です。圧縮記帳が行われている場合は、帳簿価格が圧縮されているため、圧縮記帳がなかった場合の帳簿価格と減価償却費を算定しなおすことが必要であることに留意しなければなりません。また、製造業の場合、設備の稼働状況や実在性について確認するとともに、買収後の追加設備投資の必要性について検討することも重要です。

投資有価証券

時価をベースに含み損益を評価します。上場企業の株式であれば市場価格により時価を算定することが可能ですが、非上場企業の株式の場合は当該会社の決算書を入手して帳簿純資産にて評価することが多いです。決算書を入手できない場合は簿価にて評価することが一般的です。また、投資有価証券は事業場の必要性などから売却の可否についても検討します。

借入金

金融機関ごとの借入金額、残高、返済期限、金利、返済計画を確認します。また、財務制限条項(コベナンツ)等の特別な契約条件が付されていないか契約内容を確認することも重要です。金融機関以外の借入先がある場合は、その借入が行われた背景、金利水準の妥当性や返済状況に注意します。

退職給付引当金

従業員の退職給付債務に関わる簿外債務の有無を確認します。役員退職慰労金規程をもとに役員退職慰労金の引当不足額を確認します。役員退職慰労金規程がない場合は、過去の支給実績や一般的な計算式をもとに見積もり計算を行います。

その他

資産については実在性、帳簿価格の妥当性、回収可能性を確認します。負債については、残高の適正性と網羅性を確認します。その他、訴訟事件や製品クレームなど将来発生するリスクのある偶発債務についても検討します。

まとめ

財務DDは財務諸表を理解して分析することが必要になってきます。自社でそのような人材がいない場合には外部に依頼するなど慎重に対応することが必要です。買収後にDDでは発見できなかった簿外債務、貸倒債権、海外子会社の債務超過といったものが発覚するケースはよくあります。リスクを少しでも減らすよう念入りな調査をするようにしてください。