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生活者の見えない声を聴く「ソーシャルリスニング」とは?

ビーズクリエイトで「マーケター」「リサーチャー」と呼ばれることが増えてきた山本です。名ばかりではなく、名実ともにビーズのマーケティング第一人者と認められるよう、頑張ります。

さて、経営者に限らず、企業の営利活動に携わる人なら誰でも必ず考えること。
「売上を上げたい…!」

当然のことだと思います。
そして、そのために何をするか?という問いには模範解答が存在しません。

ヒトの購買行動というのは意外なほど奥深く、一律的なマーケティングが通用するシーンというのは皆無に近いです。

売上をアップさせる公式から考える

コンサルタントの視点から因数分解すれば、売上を上げるには2つの要素のどちらか、もしくは両方を変化させるしかありません。

 客数を上げるか、客単価を上げるか。

客数を上げるには、より多くの人に商品・サービスを認知してもらい、その優位性を訴求する活動が必要です。主に広告コミュニケーションが担う領域です。

客単価を上げるには、いくつかアプローチがあります。

商品・技術・サービスの開発などを通じて一点当たりの付加価値を高める(アップセル)。
購入商材と関連の強い別の商材の併せ買い、ついで買いを促す(クロスセル)。
単価の低い商材(もしくは無料商品)を呼び水(リード、フロントエンド)にして、興味関心層に本当に売りたい商材を訴求していく(バックエンド)。

マーケティング・リサーチ、消費者調査で分かることは、いわゆる認知率のような「既存客や見込客のボリュームを把握する」点だけではありません。
商品開発や顧客ニーズの把握、消費者インサイト洞察といった「客単価アップ」に繋がり得る領域においても、様々な手法が生まれています。

その一つが、ソーシャルリスニング、いわゆるクチコミ分析です。

AskingとListeningの違いを答えられますか?

突然ですが、AskとListenの違いを明確に説明できる人はいるでしょうか。
直訳するとどちらも「聞く(聴く・訊く)」ということになりますが、質問に対する回答というニュアンスが強いのがAskであり、Listenはどちらかというと「自然に耳に入ってくる・聞こえている」というニュアンスになります。

よくあるアンケート調査や対面ヒアリングなどで質問に答えてもらうのがAsking、SNSなどで自然発生的に生まれてくる口コミなどを「観察」する形で傾聴するのがListeningということになります。

昔のマーケティング・リサーチでは、圧倒的にAskingによる聴き取り調査が主流でした。今でも多くの市場調査は予め構成された設問に対する回答を聴取します。

けれど2010年前後から、スマホを始めとするデジタルデバイスが急速に普及し、SNSが私たち一般生活者の身近な存在になったことで、爆発的に「口コミ」などの情報流通量が増加しました。

このビッグデータを企業のマーケティング活動に活用しようという試みが生まれたのも、「消費者の声を聴く」マーケターやリサーチャーの考えとして当然のことだったのでしょう。多額のコストをかけてアンケート調査を行うだけでなく、自然発生した消費者の声の中から新しいビジネスモデルの組み合わせや商品開発のヒントを見出す。
ソーシャルリスニングは、デジタル時代の新たなリサーチ手法として脚光を浴びることになりました。

「どこで」リスニングするか?も重要

ソーシャルリスニング(口コミ分析)というと、twitterの口コミ解析などを想起する人も少なくないのですが、その傾聴のプラットフォームは他にも多く存在します。

 Facebookのページに寄せられた書き込み。
Instagramの投稿やハッシュタグに付いたコメント。
ファンが作ったコミュニティやファンページの掲示板。
ブログやnoteのような文章メディア。
食べログや楽天などに付いたレビューコメント。

企業が意図的に交流サイトのようなオンラインコミュニティを運営し、そこで自然に生まれる会話をモニタリングしている場合もあります(MROC)。

事前仮説を統計的に検証するのではなく、「仮説を発見する」ために行われる探索的な手法ですから、情報が書き込まれるあらゆるプラットフォームが「現場」になります。

それだけに、真に受け過ぎない一定のリテラシーも問われます。twitterや〇ちゃんねるのような匿名性の高い場所での発言はネタ・やらせ・バズ狙いの類ではないかなど疑って見る視点も求められるでしょう。コントロールが利かないからこそ成り立つ手法ならではの難しさも内包されます。

「お宝」を掘るテキストマイニング×問題意識

ソーシャルリスニングの対象がごく少数の場合(ちょっと想像しにくいですが)でない限り、扱うデータは非構造化データであるテキストデータである場合が殆どです。

「やっぱアイスクリームは冬の食べ物だよね!」

アンケートは定量的に解釈されることが多いので、少数意見というのは表に出ないことも多いのですが、リスニング系の調査では、一人でもそんな「面白い」ことを言っている人がいたら儲けものです。

 コンビニやスーパーでは「冬だからこそアイス」の販促を打つこともできます。
菓子メーカーなら、冬専用のアイスクリーム商品を開発するかもしれません。
広告プランナーは新機軸として冬のアイスに着目したTVCMを企画するかもしれませんね。

それでも、膨大な量のテキストデータで一人ひとりの発言を追っていくのは効率的ではありません。相手はビッグデータなので、対応するデータ処理のシステムもそれなりのものを使います。

よく利用されているのがテキストマイニングツールです。
テキストマイニングとは、テキストデータを基にしたマイニング(採掘)。形態素解析といった自然言語処理とデータ解析技術を組み合わせたものです。メジャーなものとしては「見える化エンジン」などがあります。

私も前職でこの辺りの技術的な部分はかなり研究したのですが、日本語というのは実に解釈の難しい言語です。「茶筌」「Mecab」といった無料ツールで形態素(いわゆる単語類)をバラバラにすることはできても、その結びつきや、肯定なのか否定なのかなどニュアンスの違いを表現することが難しいです。

それでも、テキストマイニングツールも日進月歩で進化していて、先ほどの例だったら、

アイスクリーム – 冬 (ポジティブ)

のようなアウトプットが出力されてくる可能性があります。

それをスルーしてしまうか、いやちょっと待て、アイスクリームと冬、だと?と問題意識を持ってデータを見るかで、マーケティングやビジネスのヒントを得られるかどうかが決まります。

ツールはビジネスそのものを生み出すことはできません。
ビジネスを生み出すのは、あくまでも解釈したり考察したりする担当者やマーケターの属人的な力量に掛かっています。

まとめ

ソーシャルリスニングは、スマホが本格普及し消費者発信のメディアが育つに連れて生まれてきたマーケティング手法の一つです。

しかしながら、その注目度の高さの割に、成功事例のようなものがあまり出回っていない印象があります。
実際の適用シーンが、ブランドロイヤリティのモニタリングだったり、風評分析だったり、商品・サービス開発のヒントとして活かされたものの「消費者の声から出来た」という一文に集約され片付けられてしまっていることも要因としてあるのかもしれません。

とはいえ、SNSを始め、消費者の声が集まるメディアは形を変えながらも、今後も消えていくことはないでしょう。専用ツールを使うとお金が掛かりますが、「Googleトレンド」「Yahoo!リアルタイム検索」、twitterでの検索のような無料サービスを使って消費者の生声をマーケティングに活用しようとする動きは、現代のビジネスマンにとって当たり前のリサーチ手法として定着しそうです。

ビーズクリエイトは、クライアントにおけるWebマーケティングの推進役として、こういったITツールやサービスを利用したノウハウを蓄積し、課題解決に取り組んでいます。
ユーザーの声が聴きたい、といったご要望にも、様々な選択肢をご提示できますので、マーケティング全般についてお気軽にご相談くださいね。