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顧客ロイヤリティの指標、NPS®って何?

ビーズクリエイトの山本です。

経済・経営・マーケティング関連のメディアを見ていると、時折「NPS®」という指標が顧客満足度や顧客オススメ度などとして登場することがあります。

NPS=Net Promoter Score とは、顧客満足というよりは顧客による商品・サービス・ブランド等に対するロイヤリティ(忠誠度)の指標として扱われることが多く、最近4〜5年ほどの間に日本企業でも広まってきました。

元々は戦略コンサルティング会社のベイン・アンド・カンパニーが開発した手法であるNPS®(登録商標です)は、大前提として、「商品・サービス・ブランド」に十二分に満足し、感動に値する顧客体験を得たユーザーは「口コミ」いわゆる推奨行動を取る、というインターネット時代の購買行動ファネルに対応した仮説のもと、成立しています。

 

NPS®とマーケティングファネル

購買行動モデルの話をすると、かつての(ネット以前の)マーケティングにおける顧客行動ファネルはAIDAとかAIDMAというモデルによって理解されていました。

AIDA=認知(Attention)⇒興味関心(Interest)⇒欲求(Desire)⇒購入行動(Action)

AIDMA=認知(Attention)⇒興味関心(Interest)⇒欲求(Desire)⇒記憶(Memory)⇒購入行動(Action)

消費者は対象の商品・サービス・ブランドを知ってから、購入行動まで、というモデルで理解されていたのですね。

ところがインターネット全盛期となった今日、別の行動モデルが示されるようになってきました。
例えば、日本の広告会社が提唱したAISASモデルや、コトラー教授の5Aといったカスタマージャーニーです。

AISAS=認知(Attention)⇒興味関心(Interest)⇒検索(Search)⇒購入行動(Action)⇒共有(Share)

5A=認知(Aware)⇒訴求(Appeal)⇒調査(Ask)⇒行動(Act)⇒奨励(Advocate)

最後に「推奨」「奨励」といった口コミ行動が表されているのが特徴的ですね。
NPSの考え方もこのような口コミ行動のフェーズを前提に考案されています。

 

具体的にNPS®ってどう算出するの?

NPS、いわゆるネットプロモータースコアの算出方法は至って単純明快です。
顧客のアンケート調査のデータから簡単に算出できる。だからこそ多くの業種で取り入れられ、実質的な顧客ロイヤリティを示すスコアとして重用されたり、企業によってはKPIの一つとして取り入れられるようになってきたのでしょう。

具体的には、下記のような質問をアンケートで聴取します。

Q.この◯◯(商品・サービス・ブランド)について、あなたは友人や知人、家族、同僚などにどの程度お薦めしたいと思いますか?0〜10点の間でお答えください。

A.0点(全くそう思わない)←・・・・・・→10点(非常にそう思う)

併せて、そのように答えた理由もFA(フリーアンサー・自由回答)で聴取します。

この「顧客推奨度」の聴取結果を集計すると、0点から10点までの11段階について、それぞれ選択した人の%が算出されますね。そこから、下記の計算方法でNPSを算出します。

非常にそう思う(9−10点)の「推奨者」の割合から、全く思わない〜どちらでもない(0−6点)の「批判者」の割合を差し引きます。
元データが%なので、値は−100〜+100の間を取ります。

この値が高いか低いかで、単純に顧客ロイヤリティの高低、つまり商品やサービス、企業、ブランド等にどれだけ愛着や信頼があるか、を推し量ることができます。アンケートの設計も指標の算出も極めて平易なのですが、聴取方法を変えたりしない限りは比較的再現性良くデータを取得できる上に、他社も含めた業界全体の平均などと比較して自社がどのあたりのポジションにあるか…などといった相対的な評価に用いることもできる優れものです。

テーマパークを例にすると、TDLのNPSは+35、USJは+20…などといった感じでしょうか。
(例として挙げた仮の数値です、実際の調査データではありません)

そのロイヤリティの源泉がどういったところにあるか、という消費者心理をより深く洞察するためには、併せて取得した自由回答の分析が重要です。推奨者はどんなところに良さを感じて「薦めたい」と思ったのか、逆に批判者はどうして「薦めたいと思わない」という回答に至ったのか…これを詳細に把握することが顧客インサイトの深掘りに繋がり、訴求メッセージの開発やビジネス改善の重要なヒントになったりするのです。

 

顧客満足度(CS)に比べNPSが優れている点とは

「顧客満足度No.1」などという謳い文句の商品・サービスを目にしたことがない人はいないと思います。顧客満足度とNPS(顧客推奨度)は似た概念ですが、全く別物なのです。

顧客満足度は、アンケート調査などで消費者本人が「満足」と回答した割合のことです。期待値に対して機能やデザイン、サービス内容などが充足されていれば「満足」と大抵の人は答えるはずです。

それに対してNPSに象徴される「顧客推奨度」はあくまでも「お薦めしたいと思うか?」という問いに対する回答です。お薦めしたくなるということは、単に自分の期待が充足されただけでなく、よほど感動したか、あるいは他人の期待も充足するに違いない、と確信している状態です。単なる満足度よりもより思い入れの強い状態を反映した指標であることがお分りいただけるでしょう。

また、先ほど解説した「共有」「奨励」といった他社への口コミ行動と密接な関係にあるというのもポイントです。いわゆる対面の口コミだけでなく、ツイッターのフォロワーに教えたい、インスタやフェイスブックでシェアしたい、といったネットユーザーの心理をも反映しています。
つまり、実際のユーザーがその商品についての体験を基に「宣伝」し、知り合いやフォロワーへの認知・興味喚起活動に寄与してくれる可能性を持つ、という点が、本人の中で完結する「満足度」との大きな違いです。

 

NPSがマイナスだった!うちの評価ってヤバイの?

NPSの数値がマイナスのスコアになることはよく起こり得ます。先ほど示したような指標算出のロジックを理解していれば、NPSの数値がマイナスに振れたからといって慌てることはありません。

9−10点を付けるほどの「推奨度」が高い人というのは、相当その対象について満足(というよりもはや感動レベル)に達していると思います。
一方「批判者」と定義されているのは0−6点と結構幅広いです。「どちらともいえないから真ん中にしておくか」と5−6点を付けた人は「批判者」としてカウントされます。その割合を引いてしまうのですから、そもそもNPSというのはマイナスに振れやすい指標なのです。

特に日本人はスケール評価で両端の選択肢を選ばない傾向がある(中間ぐらいを好む)と言われていますから、NPS調査をした時には大抵の商材がマイナスのスコアを叩き出すものです。プラスとかマイナスといった数値の出方に踊らされてはいけませんね。

・時系列で見た時に昨年・一昨年に比べて数値がどう変化したか?
・他社や業界平均と比べて自社の数値が高いのか低いのか?

そういった比較の基準で見ていくのが正しいNPSの評価方法です。
絶対値に意味はほとんどありません。
むしろ業界平均等をベンチマークとして、比べてみた時に自社がどの程度なのか?をチェックする、等の使い方が適していると思います。調査会社各社などが各業界の代表企業や業界平均のNPSスコアを公開していたりしますので調べてみてくださいね。
(聴取方法、つまり質問文や選択肢のワーディング、調査対象者の属性などによってデータはかなり変動するので、留意が必要です)

 

あなたは◯◯を知人や同僚、関連企業などにどの程度お薦めしたいと思いますか?

さて、私たちビーズクリエイトは「ホームページ制作会社」として認識されているケースも少なくありません。
しかしその事業範疇は、ホームページ制作だけでなく、広告も含めたホームページの保守運用やウェブコンサルティング、もっと広くウェブを活用したマーケティング全般、ビジネスコンサルティング全般にまで拡大しています。

今回取り上げたようなNPSなど、マーケティング・リサーチに関する知見を、私自身は前職の調査会社で培ってきました。今はビーズクリエイトの業務の中に、いかにそういったナレッジを注入し、ビーズの資産にしていくか、といった点で試行錯誤を繰り返しています。

「マーケティングコンサルを主業務とするビーズクリエイトと申します」

いつかそんな形で自社の紹介をし始める日も、そう遠くないかもしれません(?)。

 

最後にお伺いします。

あなたはビーズクリエイトを知人や同僚、関連企業などにどの程度お薦めしたいと思いますか?